2017年6月3日土曜日

とある山中の藪の中で

あれは、私が25歳くらいの頃である。私は山登りに凝っていて、この日もいつものように、道のない谷筋を登っていた。私は山の中でわざわざ道から外れ、迷いながら、わけの分からない谷筋から尾根へと脱出するのが好きだった。毎回、藪の中で迷い、誰も登ったことのない岩場を登り、尾根の道へと出るのだった。
山登りをやったことのある人ならわかると思うが、これは危険な遊びである。しかし、尾根筋に出たときの達成感は格別であった。今日も命があったというほっとした安心感もあった。

あれは、私が25歳くらいの頃である(文章が重なっているぞ)。私は例によって藪の中を登って、山頂へとたどり着いた。そしてハイキングコースを下って麓に停めていた車で帰ろうとした。途中でジュースを買おうとしたら、財布がない。



今日歩いたルートを思い出してみる。財布を出した覚えもない。あたりまえである。山中に何も売ってはいないのだから、財布を出すような場所はどこにもない。

下りはハイキングコースだから、落とすことはほとんどない。それに比べて登りはほとんどが藪の中であったので、そこで落とした公算が大きい。もう一度行けばどこを歩いたかは正確に分かるが、今更、藪の中へ取りに行けない。仕方がない、帰るしかない。喉が渇いているが我慢しよう。高速道路を利用せずに家まで帰ると何時間かかるんだろうか。

そして、その日の内にハイキング道で財布を拾ったと警察から連絡があった。結局、下りで落としていたらしい。お金はいくら入っていたか分からないが、確か取られていなかったと思う。



翌日、何時間かかかって財布を取りに行き、拾った人に礼をして、また何時間かかかって家に帰った。財布は気をつけて管理しなくてはいけないと、深く反省したので、以降現在まで財布を落としたことはない。もっとも、家に忘れたことは何回かある。



オーダメイドで創るこだわりの本革名刺入れ

0 件のコメント:

コメントを投稿

ストレスケア