2017年6月8日木曜日

ぬえの鳴く夜は恐ろしい

私は高校の頃から推理小説を読み始め、1000冊以上は読んでいる。私は元来本を読むのが遅い。その上、探偵が最後に「あなたは、あの時、こんなことをしたでしょう」などと言うと、そのページまで戻って確かめるのでなお遅くなる。

「ぬえの鳴く夜は恐ろしい」という言葉は、横溝正史の「悪霊島」の冒頭部に出てくるが、この「ぬえ」は妖怪ではない。鳥である。夜の鳥と書いて「鵺」を「ぬえ」と読む。鵺の鳴く夜がなぜ恐ろしいかは、「悪霊島」読んでくれ。ネタばらしをすると横溝正史の悪霊にやられてしまうかも知れない。

さて、金田一耕助は言語学者の金田一京助をモデルにしているが、この探偵、実はとんでもないヘボ探偵である。横溝正史が何かの本に書いていたが、「犯人が立てた完全犯罪を、成し終えた後、探偵が解き明かすのが醍醐味だ」とのことである。従って、前半は、犯人の思うがままに殺人事件が行われ、金田一耕助はただ、指をくわえてそれを見ているだけである。犯人が計画を完遂してから金田一耕助が推理するのだが、私は、時々、犯人に同情して、「そんなことをしても、死んだあいつは喜ばないぞ」と言ってしまうのである。

「金田一少年の事件簿」という漫画がある。アニメ化されているのでご存知の方も多いと思う。主人公の金田一一(きんだいちはじめ)は金田一耕助の孫という設定になっている。彼の決め台詞が、「名探偵と言われた、じっちゃんの名にかけて」なのだが、これは変である。間違った推理をすると、じっちゃんの名が汚れるというのか。特にこの主人公、間違った推理を度々行っている。また、偶然の証拠によって犯人が分かるということもある。

横溝正史は推理に重きを置いた、小説である。対して江戸川乱歩は、小説の雰囲気に重きを置いていた。そのため乱歩の小説はトリックとしては無理なものがかなりある。もちろん証拠もなく犯人が分かることもある。
推理小説は海外から伝わってきたものだが、当初は、怪奇小説やSF・幻想小説・冒険小説など多数の分野が含まれていた。やがて時代と共に分化していくのである。




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