2017年5月8日月曜日

黄昏の猫

私は中学の時塾に通っていたことがある。週に2~3回夕方6時からか7時からか忘れたが、2時間ほどやる。この塾、結構厳しくて有名なところで、私もうとうとしていて先生にチョークを投げられたことがある。昔は卓球の選手だったからコントロールはいいとか言っていたが、野球のピッチャーならともかく、卓球の選手なら投げるよりラケットで打った方が正確に飛ぶんじゃないか?

それはそれとして、この塾は先生の自宅と一緒になっているのだが、この家に一匹の猫がいた。「山寺の和尚さん事件」の3~4年前のことである。

大抵は授業が始まる30分ぐらい前に行って、私はよく碁を打っていたが、負けっぱなしだった。ルールもろくに知らないんだから当たり前である。すると猫がやって来る。この猫、あごを撫でるとごろごろと仰向けになり、お腹を撫ぜると気持ちいいのか動かなくなる。碁をしながら猫をあやしていたが、やはり、思いついてしまったのである。

猫のダンス(目がチカチカする)
猫の頭と碁石の入れ物ー碁笥というのだがー、猫の頭がちょっと小さいぐらいかなと思ってしまったのである。この頃は私は優秀な子であった。思いついたらすぐ実行。後先考えない。先生にしてみれば、素直で(単純な)、積極的な(行動がすぐに読める)扱いやすい子であった。

左手で猫をあやしながら、右手で碁笥から碁石を少しずつ抜いて行く。猫に感づかれてはならないから、音はあまり立てない方がいい。やがて碁笥が空になると、さっと猫の頭にかぶせた。猫は何故か後ろに進みながら、前足で碁笥を取ろうとする。しかしなかなか取れない。それでも何とか碁笥を取って、逃げて行った。

しかし、そこは畜生の浅はかさ、3日後にはすっかり忘れていて、また寄って来る。猫は3年飼っても3日で恩を忘れるというが、全くその通りである。記憶の容量が2日分しかないのだろう。

そして、また、猫を仰向けにした後、囲碁を打ちながら碁笥の石を抜いてを繰り返す。

先生に見つかって、叱られるのは、まだまだ先のことである。

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