それはそれとして、この塾は先生の自宅と一緒になっているのだが、この家に一匹の猫がいた。「山寺の和尚さん事件」の3~4年前のことである。
大抵は授業が始まる30分ぐらい前に行って、私はよく碁を打っていたが、負けっぱなしだった。ルールもろくに知らないんだから当たり前である。すると猫がやって来る。この猫、あごを撫でるとごろごろと仰向けになり、お腹を撫ぜると気持ちいいのか動かなくなる。碁をしながら猫をあやしていたが、やはり、思いついてしまったのである。
猫のダンス(目がチカチカする) |
左手で猫をあやしながら、右手で碁笥から碁石を少しずつ抜いて行く。猫に感づかれてはならないから、音はあまり立てない方がいい。やがて碁笥が空になると、さっと猫の頭にかぶせた。猫は何故か後ろに進みながら、前足で碁笥を取ろうとする。しかしなかなか取れない。それでも何とか碁笥を取って、逃げて行った。
しかし、そこは畜生の浅はかさ、3日後にはすっかり忘れていて、また寄って来る。猫は3年飼っても3日で恩を忘れるというが、全くその通りである。記憶の容量が2日分しかないのだろう。
そして、また、猫を仰向けにした後、囲碁を打ちながら碁笥の石を抜いてを繰り返す。
先生に見つかって、叱られるのは、まだまだ先のことである。
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